Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
そこが煤竹色の部隊長の小屋であった。木と竹を簡単に組み合せ、屋根をニッパで葺いた単純な作りである。床は湿気を避けて人の背丈ほどもあるが、階段を踏むと自らぎしぎしと鳴った。開き扉を押し中に入ると、部屋の内はまだ暗かった。窓の前に据えた竹製の机に肱をつき、隊長は椅子にかけたまま彼が入って来たのも気付かぬふうであった。扉のあおりでゆらぐ蝋燭の光の中では、その横顔は何時になく暗く沈んで見えた。机の上には空薬莢を花瓶とし、黄色の花が二三本さしてある。書類綴りの耳を隊長の指が意味なく弄んでいた。彼はぼんやり部屋の中を見廻しながら、暫く床の上に佇んでいた。天井の暗みにひそむらしい虫が突然キキキと啼いたが、隊長は今まで椅子にもたせかけていた軍刀の柄を掌で膝の間に立てながら、しかし、彼にはやはり横顔を見せたまま、低い乾いた声で呟いた。
「宇治中尉か」
そして窓の方に顔をあげながら苦しそうに眼を閉じ、椅子の背に肩を落した。
「――実は今日、花田軍医のところに連絡に行って貰いたいのだ。花田が何処にいるか、場所は判っているだろうな」
彼の返事を待たず、椅子をぎいと軋ませ隊長は身体ごと彼の方に向きなおった。