Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
それは押えようがなかった。入口を入る時心がまえが出来ていたつもりにも拘らず、日頃見なれた部下の兵隊の顔を目前にした時、覚えず血が頬にのぼって、彼は暗がりに顔を背けながら不機嫌な声で言った。
「おれは今日命令で出張する。あとのことは松尾軍曹がやれ」そして低い声でつけくわえた。「帰りは――帰りは何時になるかわからん」
語尾が少しふるえた。皆しんと黙った。その沈黙は何か不自然なものに宇治には思えた。身体を少しずつ動かして彼は洞窟の中を見廻した。白く光る鐘乳石の間に道具がいくつも並んでいて、兵たちの青白い視線が一せいに彼を刺して来るようであった。彼はたじろぎながらそのまま歩を返そうとした。背後から松尾軍曹の声がした。何を言ったのか判らないが、彼は立ち戻らずに出口の方にあるいた。外には朝の光があふれていた。石階をのぼる時初めて冷たい汗が宇治の背筋を流れ出して来た。
〇八三〇高城伍長は彼の仮小屋に来た。その少し前に隊長当番兵の佐伯が来て、しっかりやるようにとの隊長の伝言と贈物の水筒をもたらした。水筒をあけるとウィスキイの香がした。そして佐伯はずるそうに笑いながら、物入れから鶏卵を二箇出して、之を中尉殿に上げます、と言った。