Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 148.519 Zeichen · 296 Bildschirme
「私は自分で稼ぎます」
「世の中はそう簡単じゃあなくってよ」
「私はこの家も出ます」と新八が云った、「御厄介になったことは忘れません、しかし私がここへ来たのはまちがいでした、私はもっと早く出てゆかなければならなかった、自分でもそれを知っていたのに」
「新さん、あんたそれ本気で云ってるの」とおみやが云った。
新八は腕で顔を押えながら、壁へよりかかって泣きだした。おみやは「新さん」と云い、はね起きて、新八にすがりついた。新八の泣きだしたことが、彼女の躯に新しく火をつけたようであった。おみやは狂ったように新八を抱きしめ、頬ずりをし、そして声をふるわせて云った。
「あんたはゆきやしない、ゆけやしないわ、外には伊達さまの追手の眼が光ってるのよ、あんたはお兄さんの仇を討たなければならないでしょ、あたしの兄だってあんたを放しゃしないし、あたしだって放しゃしないわ」
おみやの言葉はしどろもどろだった。新八は啜りあげながら、しかしもう、おみやからのがれようとはしなかった。
「あたしを捨てないで、新さん」とおみやは云った、「あんたはあたしにとって初めての人よ、躯はよごれてるかもしれないけれど、あたしの心はきれいよ、あたしは娘のままの、汚れのない心であんたに恋したのよ、わかるでしょ、わかるわね、新さん」