Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 148.519 Zeichen · 296 Bildschirme
妻を寝かせてから、又五郎はお市をつれて買い物にゆき、帰って来ると、勝手で炊事を始めた。――新八はそのもの音ではじめて気がついた。食事ごしらえなどということはしたこともないし、しなければならないと考えたこともない。おみやが去ったので、これからは自分で煮炊きをしなければならない。当然そこに気がつく筈であったのに、又五郎が始めたのを知って、ようやく気づいたのであった。
「いや大丈夫です」又五郎は米をとぎながら、微笑をうかべて云った、「妻が弱いので、いつのまにかこんなことが上手になりました、手数は同じことですから貴方のもいっしょに作りましょう、どうか坐っていて下さい」
新八は押してどうとも云えなかった。
寝ている妻女の咳と、勝手でお市の「はい、はい」と答える声と、燃えだした釜戸の、焚木のはぜる音を聞きながら、新八はぼんやりとおみやのことを想っていた。
移って来た翌日は、又五郎は一日うちにいて、自分たちの部屋をととのえたり、娘をつれて買い物に出たりした。
新八はなんとなく居づらかった。食事ごしらえなどは、年からいっても当然、自分がしなければならないだろう、する気持はもちろんあるのだが、又五郎が先へ先へとやってしまうし、どう手を出したらいいか、彼にはまったくわからなかった。