Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 148.519 Zeichen · 296 Bildschirme
彼女は頷いた。
甲斐は訊き返した、「なんだって、――」
「ゆうべおそくお着きになったんです」
「奥がか、――」
「中黒さまがお供ですわ」
甲斐の額の皺が深くなった。彼はひくく「うん」といい、足もとへ眼をおとした。
「なんだろう、――」
「御病気の治療をするために、江戸の良い医者にかかりに来たのだ、と仰しゃっていらっしゃいます」
「供は達弥だけか」
「あたしの存じあげているのは中黒達弥さまだけですけれど、ほかにお二人、中年の御家来がごいっしょです」
甲斐は顔をあげた。おくみは甲斐の顔を、ぎらぎらするような眼で見あげた。もう七八年も世話をしているが、彼女がそんな膏ぎった眼つきをするのは、初めてである。
「あたしにはわかってます」とおくみは云った、「ごぜんのお帰りが延びたので逢いにいらしったんですわ、御病気なんて嘘、御病気どころですか、お顔色もいいし、なが旅をしていらしったのに、ずいぶんお元気ですもの」
「なにを怒ってるんだ」
「怒ってなんかおりません」おくみは赤くなった。
「怒ってなんかいるもんですか、奥さまがあまりお若くてお美しいので、びっくりしているんです」
「あれはもう三十七だ」