Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 148.519 Zeichen · 296 Bildschirme
甲斐は七十郎を見た。七十郎は云った。
「貴方はいったいなにを考えているんです」
「そうだね、――」と甲斐はおくみを見た、「まずこのおくみと、もう一人の女のことだろうかね」
「もう一人ですって」とおくみが振返った。おくみは甲斐が、出府して来た妻女のことを云うのかと思い、それは云ってはいけない筈だと、眼がおで注意した。
「ああ、もう一人」と甲斐は云った、「七十郎に云われるかと思ってはらはらしていたんだ、このあいださる人にさそわれて、新吉原へゆきましてね、偶然なんだが、それが山本屋という店だった」
「まあ、曲輪へいらしったんですか」
「人にさそわれたんだ」
「御用で出られなかったと仰しゃったじゃあございませんか」
「ひとつやろう」甲斐は盃をおくみにさした。おくみは盃には眼もくれなかった。
「御用で出られなかったって、湯島へは半月もいらっしゃらなかったのに、曲輪へいらっしゃるひまはおありになったんですか」
「この話しはよそう」と甲斐は云った、「おまえの罪だぞ、七十郎、おまえがへんなことを訊いたからだ」
「貴方には負けます」
「飯にしようか」
「貴方には負けです原田さん、だがいいですか、私はいつか貴方から本音をひきだしてみせますよ、いつかはね、必ずですよ」