Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 148.519 Zeichen · 296 Bildschirme
供は村山喜兵衛と塩沢丹三郎の二人で、丹三郎が姉弟を呼びに来たが、宿坊へいってみると、甲斐はくつろいで扇子を使っていた。
姉弟が坐ると、喜兵衛も丹三郎もすぐに出ていった。
「もっとこちらへおいで」と甲斐は云った。
宇乃は虎之助の肩に手をかけながら、僅かに前へ出た。
「宇乃というんだね」
甲斐は微笑した。温かく包むような、云いようもなく人を魅する微笑であった。宇乃もわれ知らず微笑した。
「そちらが虎之助か」
虎之助はこくりと頷いた。
「お利巧らしいな、幾つになる」
虎之助は黙って片手の指をひろげ、それに片手の指を一本加えてみせた。甲斐は笑った。すると白いきれいな歯が見え、眼尻がやや下がった。
「どうした、坊、口では云えないのか」
「云わんない」
「虎之助さん」と宇乃が云った。
甲斐がよしよしと云った。それから、静かな眼で宇乃を見た。
「お父さんやお母さんのことは、いまはなにも云わない、いま話してもわかりにくいような、むずかしいゆくたてがあるのだ」
「はい」と宇乃は頷いた。
「そして、そのために、おまえたち二人、とくに男の子にはまだ危険がある」
宇乃は眼をあげた。
「もちろん心配することはない、私がまちがいのないように気をつけている。