Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 148.519 Zeichen · 296 Bildschirme
裏庭に面した腰高窓の、明り障子の左右があけてあり、庇に吊った風鈴が、ときおり、もの憂そうにリリと鳴っていた。
「狭いお寝間だこと」律は立ったままで云った、「夏でもこんな狭いお寝間でおやすみなさいますの」
「町なかはたいていこんなものだ」
「そうでしょうか」律は衣桁のほうへゆき、掛けてある良人の寝間着を取った、「もういくらか馴れましたけれど、来たばかりのときはあんまりどのお部屋も狭いので息が詰まるような気持でしたわ、お着替えあそばせ」
「いま誰か来るよ」
「わたくし致しますわ」と律は云った、「館ではこんなことはできませんけれど、ときには着替えのお世話くらい致しとうございますわ」
「館だってできるさ」
「あらそうでしょうか」
律は良人に着替えさせ、うっとりしたような眼で良人の顔を見まもった。ようやく二人きりになれたのと、芝居を観て来た昂奮が、こころよい酒の酔いとともに、彼女の血を熱くするようであった。
「ねえ」律は微笑しながら、良人をやさしくにらんだ、「おくみさんのこと、うかがってもよろしくって」
「こっちから頼みがある」
甲斐は坐って、窓の障子をあけひろげた。
「うかがってはいけませんの」