Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 148.519 Zeichen · 296 Bildschirme
政右衛門はその夜も駕籠の供についた。しりきり半纒に、草鞋ばきで、腰に木刀を差し、印のある提灯を持って、駕籠の先に立って駆けた。
普請小屋まで十七八町。お茶の水を越しておりると、まもなく吉祥寺の前へ出る。その寺はすでに駒込へ移ることになっており、境内の木などもおおかた伐られていたが、そこにある橋は、まだ吉祥寺橋と呼ばれていた。
甲斐は寺の前で駕籠をおりた。
「お待ち申しますか」と政右衛門が訊いた。
「うん」と甲斐は囁いた、「駕籠は隠しておこう、おまえは木戸まで来てくれ」
政右衛門は若い者たちに手を振った。甲斐は歩きだしながら、暗い道の左右にするどく眼をくばった。
一丁ばかりゆくと、小屋の柵があり、伊達家の定紋のある高張提灯が見えた。それが表木戸である。甲斐は柵の手前を北に曲り、低い声で「望月」をうたいだした。政右衛門は提灯で足もとを照らしながら、甲斐の斜め前を歩いていた。
「……往き来の旅人を、とどめ申して、身命を継ぎ候」と甲斐はうたい続けた。酔った者の微吟というふうな、ごく低い声であった、「……今日も旅人の、御通り候わば」
そううたいかかると、柵の中から、これも低いさびた声で、こうつけるのが聞えた。