Japanische Klassiker mit Furigana
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はるはばしゃにのって
機械・春は馬車に乗って
横光 利一
Lesen Sie 機械・春は馬車に乗って (はるはばしゃにのって) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 77.492 Zeichen · 156 Bildschirme
彼は子供を探しあぐねて戻ってみてもまだ子供の姿は見えなかった。附近の交番へ頼んでおいた返事も無益であった。芳江は門口で泣きながら探しに行った人人の戻って来るのを待っていた。けれども誰もぼんやり黙って帰って来た。いずれ戻って来るだろうと梶はまだ思っていたが、そのうちに気が気でなくなり、再び子供を探しに出かけた。しかし、馳けても目的が分らぬのであるからどちらを向いて馳けて良いか見当がつかなかった。
彼は空(むな)しい思いであてどなくうろつきながら、
「これゃ、知識階級の苦しみという奴だ」
とこう思った。しかし、それは梶には笑い事ではなかった。日本へ帰って来るとこんな苦しみがあったのかと、彼は暗澹(あんたん)となりまさる胸の中に顔を埋めるようにして幾つも坂道を上ったり降りたりした。ときどき立ち停って子供の名を呼んでみたが、子供も同様にどこかで立ち停っている筈(はず)はないのだから返事はもとより聞えなかった。ただ遠くの方で子供の名を呼ぶ他の探し手の声が聞えて来ると、まだそれでは見つからぬのかと一層不安が増して来た。彼は歩きながらも、これから将来において幾度こんなことがあるかしれないのだと思うと、悲しみついでに今一度にどっと悲しみに襲われてしまいたいと思った。