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Japanische Klassiker mit Furigana

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はるはばしゃにのって

機械・春は馬車に乗って

横光 利一

Lesen Sie 機械・春は馬車に乗って (はるはばしゃにのって) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 77.492 Zeichen · 156 Bildschirme

Aozora Bunko

もし伝教に自身の能力に頼るよりも、自然に頼る精神の方が勝れていたなら、少くともここより比良を越して、越前の境に根本中堂を置くべきであったと考えた。もしそうするなら、京からは琵琶湖の舟楫と陸路の便とを兼ね備えた上に、背後の敵の三井寺も眼中に入れる要はないのであった――。

こういうような夢想に耽って歩いている定雄の頭の上では、また一層鶯の鳴き声が旺んになって来た。しかし、定雄はそれにはあまり気附かなかった。彼は自身に頼る伝教の小乗的な行動が、いま現に、まだどこまで続くか全く分らぬ雪の中を、駕籠を捨てて徒歩で歩き抜こうとしている妻の千枝子と同様だと思った。それなら今の自分は弘法の方であろうか。こう思うと、定雄はまた弘法の大乗的な大きさについて考えた。出来得る限り自然の力を利用して、京都の政府と耐久力の一点で戦ったのであった。つまり、いまの定雄について考えるなら、駕籠を利用して行く先の不明な雪路を渡ろうというのである。弘法は政府と高野山との間に無理が出来ると行方をくらまし、問題が解決するとまた出て来た。そうして生涯安穏に世を送った弘法は、この叡山から京都の頭上を自身の学力と人格とで絶えず圧しつけた伝教の無謀さに比べて、政府という自然力よりも恐るべきこの世の最上の強権を操縦する術策を心得ていたのである。