Japanische Klassiker mit Furigana
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はるはばしゃにのって
機械・春は馬車に乗って
横光 利一
Lesen Sie 機械・春は馬車に乗って (はるはばしゃにのって) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 77.492 Zeichen · 156 Bildschirme
裏のこのあたり一帯の大地主に三夫婦揃った長寿の家もあったが、その真ん中の主人も斃(たお)れた。
こんな日のうちに加藤家ではまた第三番目の子供が生れた。それは初の男の子だった。朝ペタルを踏み出す父の後から、子供たちの高次郎氏を送り出す賑(にぎ)やかな声が、夫人の声と一緒にいつものごとく変らずに聞えていた。実際、私はもう十幾年間、
「行ってらっしゃい。行ってらっしゃい」
とこう呼ぶ加藤家の元気の良い声をどれほど聞かされたことかしれぬ。その度(たび)に私は、この愛情豊かな家を出て行く高次郎氏の満足そうな顔が、多くの囚人たちにも何か必ず伝わり流れていそうに思われた。この家の不幸なことと云えば、見たところ、恐らく私の家の腕白な次男のために、女の子の泣かされつづけることだけではなかろうかと私は思った。どこからか女の子の泣き声を聞きつけると、私は二階から、「またやったな」と乗り出すほどこの次男のいたずらには梃擦(てこず)った。このようなことは子供のこととはいえ、どことなく加藤家と私の家との不和の底流をなしているのを私は感じたが、それも永い年月下からこの二階家を絶えず揺りつづけた加藤家に対して、自然に子供が復讐(ふくしゅう)していてくれたのかもしれぬ。