Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぶけわらじ

武家草鞋

山本 周五郎

Lesen Sie 武家草鞋 (ぶけわらじ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.835 Zeichen · 35 Bildschirme

Aozora Bunko

伝三郎は自分をかえりみる気持でそう思った。

秋もようやく深く、草原も丘の林もめっきり黄ばんできた或る日、いねが庭の畑でせっせと土を耡くっているのを見て、伝三郎はしずかに近づいていった。老人は昌覚寺の稽古日で留守だった、日向にいると汗ばむほどの暖かい日で、澄みあがった高い空ではしきりに鳶が鳴いていた。

「なにを作るのですか」伝三郎がそう呼びかけると、いねはとびあがるような姿勢でふり返り、頬から耳のあたりまでさっと赧くなった。

「まあびっくり致しました、おいでになったのを少しも存じませんでしたから」

「それはどうも、そんなに熱心にやっておいでとは知らなかったのです、なにをお作りなさるのですか」

「蕨を作りますの、ここはみんな蕨でございますわ」

「ほう、蕨は畑にも作るんですか」伝三郎は初めて聞くので珍しかった、「……わたしはまた自然に生えているのを採るだけかと思いましたが」

「たべるだけならそれでよいのでしょうけれど、こうして作るのは頂くほかに根から糊を採りますの、蕨糊といって、紙にも布にも、それから細工物にも使う、強いよい糊が出来ます」

そしていねはまた楽しそうにお饒舌りを始めた、糊の作り方から蕨の世話に移り畑の土の案配、根の善し悪しなど、艶やかなまるみのある声で、なにかひじょうに重大なことでも語るように熱心に話しつづけ