Japanische Klassiker mit Furigana
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ぶけわらじ
武家草鞋
山本 周五郎
Lesen Sie 武家草鞋 (ぶけわらじ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.835 Zeichen · 35 Bildschirme
二
岡崎殿とは徳川家康の長男、三郎信康をさす、不運な生れつきのひとで、徳川家のために尠なからぬ功績はありながら、複雑な事情から父に疎んぜられ、天正七年の九月、ついに遠江のくに山香の二俣城で自刃して果てた。原因は説に依って違うが、父家康の内命による死だと伝えられている。いかにも哀史というべきその話は伝三郎もよく知っていたが、眼の前にその遺跡があろうとは気づかなかった、そしてあれがその城跡だと教えられたとき、説明しようのない怒りを感じたのである。それは岡崎殿の悲運が、そのまま自分の身の上を暗示するように想えたからかも知れない。顔を洗いながら、かれは恥かしさに背筋へ汗の滲むのを覚えた。
「幾らかお疲れが休まりましたか」食膳につくと老人が労るようにこちらを見ながらそう云った、「……べつにおすすめは致しませんから充分に召しあがって下さい、韮雑炊は疲れにはよいものです」
礼を述べようとしたが口を切る機会を失って、伝三郎は会釈しながら黙って箸をとった、老人は葛布のそまつな袴の膝を折り目正しく坐り、なにか祈念するもののようにじっと瞑目していた。
二
宗方伝三郎は出羽のくに新庄の藩士で、二百石の書院番を勤めていた、父も謹直なひとだったが、かれはそれに輪をかけたような性質で、少年の頃から清廉潔白ということをなによりの信条として育っ