Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれえぬひとびと
武蔵野
国木田 独歩
Lesen Sie 武蔵野 (わすれえぬひとびと) von 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 94.018 Zeichen · 192 Bildschirme
しかしてわれ今、しいて自らこの乙女を捨てて遠く走らんとす。この乙女を沙漠の真中にのこしゆかんとす。これまことにわれの忍び得ることなるか。
われ近ごろ、猛き獅子と巨蠎と、沙漠の真中にて苦闘するさまを描ける洋画を見たり。題して沙漠の悲劇というといえどもこれぞ、すなわちこの世の真相なるべきか。げにこのわれなき世こそ治子の眼にはかくも映るなるべし。しかしてわれはいかん、われはいかん。
青年は恋を想い、人の世を想い、治子を想い、沙漠を想い、ウォーシスを想い、想いは想いをつらねて環り、深き哀しみより深き悲しみへと沈み入りぬ。風の音は人の思いを遠きに導き、水の流れは人の悲哀を深きに誘う。かれが前なる流れは音もせで淀みなく走るを、初めかれ心なくながめてありしが、見よ、水上より流れ来たる木の葉を、かれはひたすらながめ入りぬ。紅の葉、黄色の葉、大小さまざまの木の葉はたちまち木陰より走りいでてまた木陰にかくれ走りつ。たちまち浮かびたちまち沈み、回転りつ、ためらいつす。かれは一つを見送りつまた一つを迎え、小なるを見失いては大なるをまてり。かれが心のはげしき戦いは昨夜にて終わり、今は荒寥たる戦後の野にも等しく、悲風惨雨ならび至り、力なく光なく望みなし。