Japanische Klassiker mit Furigana
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しのふちより
死の淵より
高見 順
Lesen Sie 死の淵より (しのふちより) von 高見 順 (たかみじゅん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.084 Zeichen · 38 Bildschirme
この埋立地
心のけだもの
心の部屋
どこへおいででしたと言った
おれはスリッパをぴたぴた言わせて廊下を歩いた
しめった地面をあいつが歩いて行った足音を思い出す
おれの部屋は遠く
永久にたどりつけないみたいだ
いやな臭いがする廊下でおれはつぶやく
あれは生だったのではないか
この埋立地
この埋立地はいつまでも土が固まらない
いつまでもじくじくしていて
草も生えない
生き埋めにされた海の執念を
そこにみるおもいがする
たとえ泥んこのきたなさ醜さでも
しつこい執念は見事だ
雨あがりの一段とひどい泥濘の
今朝の埋立地に足跡がついている
危険な埋立地を歩いたやつがいる
その勇ましさも見事だ
なんの執念だろうか
がぼっと穴になって残っている足跡は
まっすぐ海に向っている
それはそのまま海のなかに消えている
心のけだもの
けだものよ
眠りから早くさめて
兇暴に駆けめぐれ
私の心のなかのけだものよ
おまえの猟場を駆けめぐれ
死の影の下で眠りこけている間に
たちまちそこが占領されたようだ
ほかの獣に
死となんらかかわりのない獣たちに
おまえのナワ張りは荒らされてしまった
心の部屋
一生の間
一度も開かれなかった
とざされたままの部屋が
おれの心のなかにある