Japanische Klassiker mit Furigana
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しのこうかい
死の航海
国枝 史郎
Lesen Sie 死の航海 (しのこうかい) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.634 Zeichen · 18 Bildschirme
「諸国の人種の集まっている様子は、恰度人間の博覧会ですわね」
旅行者の一人は心の中で嬉しそうに独言を呟いた。
「なんて素的な町だろう。阿弗利加趣味と西欧趣味とが斯う旨く調和しているなんて、なんて素的な町だろう!」
陽が傾くに従って人々はいよいよ出盛った。今日の仕事の結終を急いでつけようとするのでもあろうか無数に並んでいる工場からは、鉄槌の音や機重器の音や汽缶の音がさも忙しく追い立てるように聞えて来る。海に突き出た船渠からは喘息患者の咳のような排水の音が聞えて来る。乗客を満載した電車の列は市の端れから駛って来ては桟橋の此方で車を停め、そこで乗客を呑吐して又市の方へ駛って行く。其都度港の海岸通へは多数の人々が電車から卸され小路小路へ散って行く。
それら雑踏する人達に混ってブラブラ暢気そうに歩いているのは各国の水夫の姿である。大黒帽子にだぶだぶの短服、袋のようなズボンの先からほんの少しばかり靴先を出して、マドロスパイプを喰わえた様子は、いかにも海洋の労働者らしい。
海には無数の船舶が、態々の姿で纔っている。穏かな波は戯れるようにその船腹をピチャピチャ嘗め、浮標や短艇や荷足舟などをさも軽々と浮かべている。