Japanische Klassiker mit Furigana
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しのこうかい
死の航海
国枝 史郎
Lesen Sie 死の航海 (しのこうかい) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.634 Zeichen · 18 Bildschirme
三
「そらよ」と水夫は云い乍ら金貨を一つ投げ出した。
「これぁお前金貨じゃないか」
「足りねえとでもいうのかい?」
「なんのなんの多過ぎるのよ」
「多過ぎるってことがあるものか。爺さんは逗留するんだから、その間の食費と部屋代だ」
「フーン、逗留するのかい?」
「爺さんお前そうだろうな?」
笑い乍ら水夫が斯う訊くと、老人は幾度も頭を下げ、
「そう願われれば何よりで……そう願われれば何よりで……」へどもどしながら云うのであった。
「どんなものだい! 海坊主め! ガブリエル様は千里眼だよ――ところで室だが、俺の室の隣に、一ついい室が空いていたっけな。あすこへ通してやってくんな」
「あすこの室へ通すのかい。飛び切り上等の室だがな。海のよく見えるいい室だが」
「だから通しなっていうんだよ……さあさあ爺さん上がるがいい。泥靴のままで構わないよ」
斯うして不幸な漂泊者の零落し切った老人は、意外の人に助けられて、思いもよらない立派な寝所を自分の物にすることが出来た。
三
その夜から老人は水夫合宿所の上等の室を占領して、是迄の生活に比べては極楽のような生活を其処で送くることが出来るようになった。