Japanische Klassiker mit Furigana
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はは
母
Lesen Sie 母 (はは) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.551 Zeichen · 18 Bildschirme
球はとんと弾むが早いか、一筋の赤を引きずりながら、ころころ廊下へ出ようとする、――と思うと誰か一人、ちょうどそこへ来かかったのが、静かにそれを拾い上げた。
「どうも有難うございました。」
女は籐椅子を離れながら、恥しそうに会釈をした。見れば球を拾ったのは、今し方女中と噂をした、痩せぎすな隣室の夫人である。
「いいえ。」
毛糸の球は細い指から、脂よりも白い括り指へ移った。
「ここは暖かでございますね。」
敏子は出窓へ歩み出ると、眩しそうにやや眼を細めた。
「ええ、こうやって居りましても、居睡りが出るくらいでございますわ。」
二人の母は佇んだまま、幸福そうに微笑し合った。
「まあ、御可愛いたあたですこと。」
敏子の声はさりげなかった。が、女はその言葉に、思わずそっと眼を外らせた。
「二年ぶりに編針を持って見ましたの。――あんまり暇なもんですから。」
「私なぞはいくら暇でも、怠けてばかり居りますわ。」
女は籐椅子へ編物を捨てると、仕方がなさそうに微笑した。敏子の言葉は無心の内に、もう一度女を打ったのである。
「お宅の坊ちゃんは、――坊ちゃんでございましたわね? いつ御生れになりましたの?」