Japanische Klassiker mit Furigana
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はは
母
Lesen Sie 母 (はは) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.551 Zeichen · 18 Bildschirme
一
部屋の隅に据えた姿見には、西洋風に壁を塗った、しかも日本風の畳がある、――上海特有の旅館の二階が、一部分はっきり映っている。まずつきあたりに空色の壁、それから真新しい何畳かの畳、最後にこちらへ後を見せた、西洋髪の女が一人、――それが皆冷やかな光の中に、切ないほどはっきり映っている。女はそこにさっきから、縫物か何かしているらしい。
もっとも後は向いたと云う条、地味な銘仙の羽織の肩には、崩れかかった前髪のはずれに、蒼白い横顔が少し見える。勿論肉の薄い耳に、ほんのり光が透いたのも見える。やや長めな揉み上げの毛が、かすかに耳の根をぼかしたのも見える。
この姿見のある部屋には、隣室の赤児の啼き声のほかに、何一つ沈黙を破るものはない。未に降り止まない雨の音さえ、ここでは一層その沈黙に、単調な気もちを添えるだけである。
「あなた。」
そう云う何分かが過ぎ去った後、女は仕事を続けながら、突然、しかし覚束なさそうに、こう誰かへ声をかけた。
誰か、――部屋の中には女のほかにも、丹前を羽織った男が一人、ずっと離れた畳の上に、英字新聞をひろげたまま、長々と腹這いになっている。