Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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けのゆびわ

毛の指環

宮本 百合子

Lesen Sie 毛の指環 (けのゆびわ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.492 Zeichen · 9 Bildschirme

Aozora Bunko

一つ机で、由子は方丈記を写した。向い側でお千代ちゃんが木炭紙へ墨で幾枚も絵を描いた。女の絵であった。

「――お千代ちゃん絵うまいのね」

「そーお。――私絵やろうかしら」

由子は頭をふり上げ、

「いいわ、そりゃいいわ」

と熱心に賛成した。

「お千代ちゃん絵はきっといいわ、お遣んなさい、ね? する? きっとする?」

*

けれどもお千代ちゃんは絵もやらず、そのうち、祖母さんの家からいなくなった。木戸を入って行って由子は訊いた。

「お千代ちゃんどこへ行ったの」

「神戸のおばさんのところへ行ったんですよ」

「いつ帰るの?」

「もう半月ばかりで帰りますよ」

「神戸のどこなの?」

「……ああ、由子さん、そのコスモスお持ちなさい、今剪ってあげましょうね」

お祖母さんという人は、親切な人であったがそういう風な返事をした。

再びお千代ちゃんの顔を見た時、由子は「ひどいわ、黙って行っちゃうなんて!」

と云った。

「御免なさいね。――あのね――誰にも云わないでね……私本当は神戸で小母さんなんかのとこにいたんじゃないのよ。嘉久子のところにいたの、手伝いしながら見習いしていたの。