Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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すいちゅうのきゅうでん

水中の宮殿

野村 胡堂

Lesen Sie 水中の宮殿 (すいちゅうのきゅうでん) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.533 Zeichen · 52 Bildschirme

Aozora Bunko

目標は、行手のほのかな明、何十メートル先か判りませんが、岩をくり抜いた隧道の四壁に衝突しながら、健一は必死と手足を働かせて、三十分ばかり――いや実はほんの三分ばかりですが、三十分も三時間も潜っているほどの苦しさを堪えて、盲滅法に前へ、前へと進みました。

両側の二少女は少しも健一の邪魔をしませんが、大選手と一緒に潜っていられるわけは無いのですから、少しは水を呑んだのでしょう、兎もすれば、バンドを掴んだ手が緩みますが、水の中に、三人の方向を示してくれる明は、少しも先刻より明るくなりません。

健一は最後の力がつきました、それに、右の方のバンドを掴んでいた綾子は、力がつきたものか、健一にもよく判るほど、水の中で藻掻いておりましたが、急にバンドの手を離して、スーと浮いて行きます。

危いッ――水の中で口はきけませんが、健一は驚いてそれを追いました、もう最後の精力も燃し尽くして、健一ほどの者も、この上の辛抱が出来なかったのです。

「あッ」

健一は思わず声をあげました。身体を浮かすと、何時の間にやら顔が水の上に出て、爽やかな夜の空気を胸一杯吸っていたのです。

丁度木立の蔭になった月の美しさ。