Japanische Klassiker mit Furigana
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すいちゅうのきゅうでん
水中の宮殿
野村 胡堂
Lesen Sie 水中の宮殿 (すいちゅうのきゅうでん) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.533 Zeichen · 52 Bildschirme
ところが、思いもよらぬ事件が、思いもよらぬ形で、現れました。
或朝――、ヴェランダで由比が浜を眺めながら、何心なく新聞を読んでいた綾子は、
「あっ」
不意に籐椅子から起上りました。
「百足に刺されて?」
燿子は飛んで来ました。この辺は大きい百足の多いところで、時々それに刺されて大騒動することがあったのです。
「爺やが、爺やが」
「爺やさんがどうなすって――まア大変ッ」
燿子は新聞を取上げて、指さされた記事を一目見ると、これも思わず大きい声を出してしまいました。
故立花博士邸に怪盗
老僕を惨殺して金庫を破る
助手滝山某に濃厚な疑い――
この標題を見ただけでも、事件の容易ならぬことが判ります。
「私、行って来るワ」
暫くすると綾子は、決然として顔を振り仰ぎました。十日あまりの休養で、身体も心も健かになったのでしょう。蒼白かった頬には興奮の血さえ燃えて、もう此処へ来た時の「悲しみの塑像」といった淋しいおもかげはありません。
「そんな場所へ行って大丈夫? 綾子さん」
燿子の方が心配そうに、綾子の顔を差しのぞくのでした。
「私は意気地がなかったんだワ。――あの時爺やがなんと言っても、どんなに気味の悪い事があっても、東京にいて、足の不自由な爺やを見てやらなければならなかったんですもの」