Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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すいちゅうのきゅうでん

水中の宮殿

野村 胡堂

Lesen Sie 水中の宮殿 (すいちゅうのきゅうでん) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.533 Zeichen · 52 Bildschirme

Aozora Bunko

記録は盗まれた――疑わしい人々

「…………」

「あの大事な、大事な記録がなくなったらどうしましょう」

綾子は矢も楯もたまりませんでした。思い立つともう階下へ降りて、夢遊病者のように、長谷の停留場の方へ飛出しておりました。

「綾子さん、待っててね。私も行って上げるワ」

燿子はお母様からお許を受けると、丁度空いていた父親の自動車に乗って鎌倉停車場へ、綾子の後を追いました。

記録は盗まれた――疑わしい人々

「お嬢さん、記録は盗まれました」

「えッ」

玄関へ飛んで出た助手の滝山は、棕呂箒のような頭を指で掻き上げながら、少し気違じみた眼を見開きました。後からは、差しのぞくように、オドオドしたその妻三枝子の眼。

博士令嬢が鎌倉にいるのが判っているのに、この騒ぎを知らせないような人達ですから、老僕の正平が殺されたのより、記録を盗まれたのを大騒ぎするのでしょう。

「尤も、記録が盗まれなきゃア、僕が人殺の疑を受けるところでしたよ、――僕はあの金庫を自由に開けられるし、記録も自由に読める事を証明して漸く許されたんです」

「…………」

綾子と燿子は、助手の弁解や、制服私服の警官達の眼を背に受けて、黙って家の中へ入りました。