Japanische Klassiker mit Furigana
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みとばいふ
水戸梅譜
山本 周五郎
Lesen Sie 水戸梅譜 (みとばいふ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.607 Zeichen · 25 Bildschirme
母親は二十六七であろうか、眉つきの凛とした顔だちで、きわめて貧しいみなりにも拘らず、身構えのどこやら、いぶしをかけたような落着いた気品がにじみでている。その前にいる少年は八歳あまりの、まだ育ちざかりではあるが、日にやけた健康そうな手足をもっていた。眉のあたりの母親によく似ているのが年よりはおとなびてみえ、ひきむすんだ唇許は意志のつよさと気質のはげしさを示していた。
遠くから響いてくる鐘の音は、ながく余韻をひいて六つをうち終ると、かすかに野分の蕭々たるかなたへ消えていった。その余韻の消えつくすまで、身をかたくしてじっと聴いていた母親はやがてしずかに、「小次郎お支度をなおしましょう、こちらへおいで」そう云って立ちあがった。おそらくは野守りでも住んでいたものであろう、屋根も朽ち壁も崩れている家の、ひと間きりしかない落漠たる部屋のかた隅で、母親はつつましくその子に着替えをさせた。木綿ではあるが紋付だった。袴をつけ脇差をささせた。それが済むと、かたちばかりの仏壇に燈明をあげ、瓶子と土器をととのえ、自分も衣紋をただしてわが子と共に仏前へ坐った。
「小次郎、あなたはいまから五百旗のあるじです、いまから水戸中納言さまの御家来ですよ」