Japanische Klassiker mit Furigana
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すいごういぶん
水郷異聞
田中 貢太郎
Lesen Sie 水郷異聞 (すいごういぶん) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.516 Zeichen · 36 Bildschirme
省三の耳にはその女の詞が切れぎれに聞えた。省三は女の顔を見た。
「このボートで往ってると、湖の魚が皆集まってくるのでございますよ、でも、あまり多く集まって来るのも煩いではございませんか」
「鯉でしょうね、私はこんな鯉を、はじめて見ましたね、この湖では鯉をとらないでしょうか」
「とりますわ、この湖で鯉を捕って生活している漁夫は数多ありますわ」
「そうですか、そんなに鯉を捕ってるのに、こんなに集まって来るのは、鯉がたいへんいるのですね」
「先生をお迎えするために集まったのでしょうが、もう、帰りましたよ」
省三は水の上を見た。今までいた鯉はもういなくなって鉛色の水がとろりとなっていた。
「もう、いなくなったでしょ、ね、それ」
省三はあっけにとられて水の上を見ていた。と、一尾の二尺ぐらいある魚が浮きあがって来て、それが白い腹をかえして死んだように水の上に横になった。
「死んだんでしょうか、あの鯉は」
「あれは、先生に肉を饗応した鯉でございますわ」
「え」
「いいえ、先生は、今晩宿で鯉こくを召しあがったのでございましょう、このあたりは、鯉が多いものですから、宿屋では、朝も晩も鯉づくめでございますわ」