Japanische Klassiker mit Furigana
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すいごういぶん
水郷異聞
田中 貢太郎
Lesen Sie 水郷異聞 (すいごういぶん) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.516 Zeichen · 36 Bildschirme
「すぐ水の傍ですね、実に理想的だ、歌をおやりでしょうね」
省三は延びあがるように水の上を見ながら云った。女は障子へ寄っかかるようにして立っていた。
「まねごとをいたしますが、とてもだめでございますわ」
「そんなことはないでしょう、こう云う処にいらっしゃるから」
「いくら好い処におりましても、頭の中に歌を持っておりません者は、だめでございますわ」
女はこう云って笑い声をたてたが、そのまま体の向きをかえて元の蒲団の上へ戻って来た。
「そんなことはないでしょう、私もこんな処に一箇月もおると、何か纏まりそうな気がしますね」
「一箇月でも二箇月でも、お気に召したら、一箇年もいらしてくださいまし、こんなお婆さんのお対手じゃお困りでございましょうが」
女はこう云って卓の上に乗っている黒い罎を執って、それを傍のコップに注いで省三の前に出して、
「お茶のかわりに赤酒をさしあげます、お嫌いじゃございますまいか」
「すこし、戴きましょう、あまり飲めませんけれど」
「婢を呼びますと、何か、もすこしおあいそもできましょうが、めんどうでございますから、どうか召しあがってくださいまし、私も戴きます」