Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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すいごういぶん

水郷異聞

田中 貢太郎

Lesen Sie 水郷異聞 (すいごういぶん) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.516 Zeichen · 36 Bildschirme

Aozora Bunko

と、小供がびっくりして大声に泣きだした。

(痴、なんと云う云いかただ)

彼は細君の頭の上を睨みつけるようにして立っていた。

細君の泣き声がやがて聞えて来た。

(何と云うばかだ、身分を考えないのか)……

彼は楼門の下を歩いていた。白い浴衣を着た散歩の人がちらちらと眼に映った。

……この後、こんな日がもう一箇月も続こうものなら、頭は滅茶苦茶になって何もできなくなる、できなくなればますます生活が苦しくなる。このうえ生活に追われて立ちも這いもできないことになる、どうしても、別居だ、別居して静に筆をとる一方で、己の哲学を完成しよう、そして、その間に時間をこしらえてあの女と逢おう……。

彼は弁天堂の横から渡月橋の袂へ往った。そこは弁天堂の正面とちがって人通りがすくなくて世界がちがったようにしんとしていた。彼は暗い中を見た。

「先生じゃありませんか」

と、聞き覚えのある女の声がした。省三は足を止めて後の方をふり返った。白い顔が眼の前に来た。それは水郷の町の女であった。

「何時いらしったのです」

「今の汽車でまいりました、ちょうど好かったのですね」

「どこへいらしったのです」