Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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すいごういぶん

水郷異聞

田中 貢太郎

Lesen Sie 水郷異聞 (すいごういぶん) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.516 Zeichen · 36 Bildschirme

Aozora Bunko

「お前は、何んと云うことをしてくれた」

省三は細君の両脇に手をやって抱き起そうとしたが、考えついたことがあるのでその手を離した。

「お前は小供が可愛くないのか、何故そんな痴なまねをする、しっかりおし、すぐ癒してやるから」

省三は玄関の方へ走って往ってさっき己が脱ぎ捨てたままである駒下駄を履いて格子戸を開け、締めずに引いてあった雨戸を押しのけるように開けて外へ出た。

「やあ、山根君じゃないか」

と、むこうから来た者が声をかけた。省三は走ろうとする足を止めた。

「何人だね」

それは野本と云う仲間の文士であった。

「野本君か、野本君、君に頼みがある。妻室がすこし怪しいから、急いで医師を呼んで来てくれないかね、ここを出て、右に五六軒往ったところに、赤い電燈の点いた家がある、かかりつけの医師だから、僕の名を云えばすぐ来てくれる」

「どうしたんだ」

「痴なまねをして、なにか飲んだようだ」

「よし、じゃ、往って来る、君は気をつけてい給え」

野本は走って往った。それと同時に省三も家の中へ走りこんだ。

細君は両手をついて腹這いになり、ひっくり返ったコップの上から黄ろなどろどろする物を吐いていた。