Japanische Klassiker mit Furigana
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なきむしこぞう
泣虫小僧
林 芙美子
Lesen Sie 泣虫小僧 (なきむしこぞう) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 34.906 Zeichen · 70 Bildschirme
啓吉は貝のように固くなった。
十八
叔母達がぷりぷりして帰って行くと、
「啓吉!」
と、母親の怒声が頭の上で破れた。上目で見上げると、針金のように剃りあげた眉を吊りあげて、貞子が障子に凭れている。
「お前のような子供はどっかへ行ってしまうといいんだ。一つとしてろくなこたアありゃアしない。――お母さんを苛めりゃいい気持ちなんだろう! ええ? そうなンでしょ……」
啓吉は黙ってうなだれていた。しまいには首が痛くなってしまった。足元を蟻の大群がつっ切って行っている。蟻のお引越しかな、啓吉はそう思いながら、痛い首をそっと下へ降ろしかけると、
「莫迦!」と、いって、横面がじいんとするほどはりたおされた。
「ええ? どこまで図々しい子なンだ! 親が何かいっているのに、地面ばっかり見つめてさ……母さん、お前のような白ッ子みたいに呆けた子なンか捨てっちまうよッ」
柔かい素足が、玄関の大きい下駄の上に降りたかと思うと、啓吉は猫の仔のように衿首をつかまれたまま引きずられて、三和土の上へずどんと転んでしまった。転ぶと同時に、思いがけない大声が出て、涙がほとばしるように溢れた。