Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かいひんいちじつ

海浜一日

宮本 百合子

Lesen Sie 海浜一日 (かいひんいちじつ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.953 Zeichen · 8 Bildschirme

Aozora Bunko

父が、手袋のごみをはたきながら戻って来た。

「どうも仕様がない。×へ電話かけさせよう」

――母は黙っていた。父は、大半白い髭をいじりつつ、背をかがめ暖炉の火をかき立てた。

二月の海浜は、まして避寒地として有名でもない外海の浜はさびれていた。佐和子は、妹と並んで防波堤兼網乾し場の高いコンクリートのかげで、日向ぼっこをしていた。正月に、漁師たちが大焚火でもしてあたりながら食べたのだろう、蜜柑の皮が乾からびて沢山一ところに散らかっているのが砂の上に見えた。砂とコンクリートのぬくもりが着物を徹していい心持にしみとおして来る。

「いい気持!」

「お母ちゃまもいらっしゃればいいのにねえ」

「……お迎えに行こうか」

「駄目駄目! どうせいらっしゃりはしないわよ、寒いって」

ピーユ。ピーユ。口笛が聞えた。

「あら」

「呼んでらっしゃる」

二人は急いで風よけの蔭からかけ出した。

「ピーユ」

「ここよ、ここよ」

浜へ下りる篠笹の茂みのところに父の姿が見えた。

「こっちにいらっしゃーい!」

佐和子は大きく手を振っておいでおいでをした。風が袂をふき飛ばした。晴子も手を振った。が、父は動かず、却ってこっちに来い、来い、と合図している。