Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かいじんにいのる

海神に祈る

田中 貢太郎

Lesen Sie 海神に祈る (かいじんにいのる) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.486 Zeichen · 26 Bildschirme

Aozora Bunko

松蔵は負われている男の衣片を巻いた手に眼をやった。

「虎馬は、手端を折りました」それから簣に寝かされている男へ眼をやって、「銀六は頭を破りました」

銀六と云われた簣の上の人夫は微に呻いていた。権兵衛はそれにいたわりの眼をやった。

「それは可哀そうな事をした、早く役所へ伴れて往って手当をしてやれ」

「虎馬の方は此方でもよろしゅうございますが、銀六の方は、安田へ往かんと手当ができませんから、いっその事、二人を伴れて往かそうと思いますが」

「そうか、それがええ、それでは早いがええ」

「そうでございます」松蔵はそこで気が注いて、「それでは、早う往け、安吾さんは役所へ寄って、早川さんから名刺をもろうて往くがええ」

安吾と云うのは後の方にいた。それは六十近い痩せた老人であった。

「ええとも、それじゃ、往こうか」

安吾の声で一行は歩きだした。権兵衛はじっとそれを見送った。松蔵は権兵衛の方へぴったりと寄った。

「旦那」

松蔵の声は外聞を憚ることでもあるように小さかった。

「うむ」

「妙な事を云う者がございますよ」

「どんな事じゃ」

「どんなと云いまして、妙な事でございますが、旦那はお聞きになっておりませんか」