Japanische Klassiker mit Furigana
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かいなんき
海難記
久生 十蘭
Lesen Sie 海難記 (かいなんき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.628 Zeichen · 56 Bildschirme
どこまで本当かわからないが、反乱を誘発するほどの惨酷な処刑が行なわれたのは事実だったらしい。クゥダン少尉の報告によると、それはこんな風にしてはじまった。
その日の正午頃、ベドウィン黒人兵と仲間のイタリー兵が葡萄酒の盗み飲みをしたという理由で死刑に処せられた。サヴィニ軍医補が刑の宣告をし、巌のような巨大な体躯をもった人啖いのセネガル黒人兵が、一人ずつ抱いて行って投げこんだ。
冷酷な処刑ぶりを見るなり、兵隊達は精神錯乱をおこした。絶望したスペイン人従卒は、マントにくるまったまま海に飛びこんだ。中年のスペイン兵は将校のナイフを盗みとると、檣材に十字架を彫りつけ、そのナイフをふるって将校団へ斬りこんで行った。五人ばかりの海兵がおさえつけナイフをとりかえし、胴上げにして海に投げこんだ。夕闇の中でまたもや殺し合いがはじまった。兵隊達は喚声をあげながら幾度となく突撃を敢行し、払暁まで奮然と戦った。
十二日(第八日目)朝になると、血だらけの筏の上に三十名近くの兵隊しか生残っていなかった。その三十名も、半数は瀕死の重傷を負い、あとの半数は息をしているというだけの状態になっていた。