Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かいなんき

海難記

久生 十蘭

Lesen Sie 海難記 (かいなんき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.628 Zeichen · 56 Bildschirme

Aozora Bunko

なんとなく率直な理解を妨げるため、一向に事相の核心に行きつくことができない。どう骨を折ってみても、相変らず漠然としているところが、この事変の特色だとでも説明するほか、言いようのないものである。

「月が沈んだ。もうなにをする気力もない、たえず高波にうたれながら、私はうとうととしていたらしい。アルプスの山々――すばらしい絶景が眼に浮ぶ。木蔭の涼しさといったら、たとえようがない。印象がそのときのままの状態で、感覚に蘇ってくる。いまやカイゼルラウテルンの森の中に私は妹といっしょに分け入ろうとしている……ところが、実際は海の中へ上体を突き入れたまま昏睡していたのだ。舷にあたる波のひびきが、断崖を駆けくだる急湍の音のように感じられる。たぶん私の身体は一二度波の下にもぐったのだろう。いくらか頭がはっきりしたとき、やっとのことで身体を起し、唇を舌で舐めてみたが、苦い海の塩の味が残っているだけで、たったいま見た泉のすがたなどはどこにもなかった。恐ろしい時だった。絶望の極みであった」

これは漂流中の入植団の嘱託技師(ブレディフ氏)が(正確にいえば、七月八日、短艇が浮洲に擱坐したとき)記憶の薄れないうちにと書きとめた日記の一節で、その後、総督府に提出されたものだが、同行の連中は、ブレディフ氏が字を書いているところも、手帖を持っ