Japanische Klassiker mit Furigana
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しせい
消えた受賞作 直木賞編
富田 常雄
Lesen Sie 消えた受賞作 直木賞編 (しせい) von 富田 常雄 (とみたつねお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.806 Zeichen · 36 Bildschirme
ここからは四五間の、芝草の上に奈世は横坐りに坐り、膝の上に高箒を横たえて居た。その後姿の斜めにひとりの若者が片手に小型の本を持って、両膝をたてて腰を下ろし、二人の間には細ぼそと松葉を焚く煙がのぼって、松の幹にからんでは消えて居る。
わしはその若者の髪の長い、和服姿の横顔に見覚えがあった。以前、杉山がわしの旧領から連れて来た、たしか、伊東某とかいった典医の孫で、胸が悪く、邸の別棟になって居る園丁小屋に住わせてくれといった若者だと気がついた。一度、居間に挨拶に来たが、それきり、わしは見たこともない。
二人の話し声はきこえなかったが、若者が片手の冊子をひらいて、間の抜けた奇妙な読み方を始めた。長く尾をひくような、又、歌って居るとも思われる節廻しであった。聞くともなしにききながら、わしは、これは朗読というようなもので、読んでいるのは多分、名ある詩人の新体詩とでもいうのであろうと気がついた。
こぼれ松葉をかきあつめ
をとめのごとき君なりき
こぼれ松葉に火をはなち
わらべのごときわれなりき。
わらべとをとめよりそひぬ
ただたまゆらの火をかこみ、
うれしくふたり手をとりぬ
かひなきことをただ夢み、