Japanische Klassiker mit Furigana
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しせい
消えた受賞作 直木賞編
富田 常雄
Lesen Sie 消えた受賞作 直木賞編 (しせい) von 富田 常雄 (とみたつねお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.806 Zeichen · 36 Bildschirme
入日のなかに立つけぶり
ありやなしやとただほのか、
海べの恋のはかなさは
こぼれ松葉の火なりけむ。
新体詩の文句はなかなかによろしいと思ったが、なんと言ういやらしい読み方をすることか。それに、わざわざ、詩の文句に合わせて、松葉を焚き、そんな場景をことさらに作り出して、芝居がかりのままごとをして喜んで居ると思うと、わしは、このおかしな、いやらしい小僧に肚が立った。奈世が焚いたやら、焚かぬやら、松葉の煙は歌の文句を地で行くように、ほそぼそと松の幹にからんでは消えてゆく。若者は冊子を持ったまま、なにやら、奈世と一言二言、話しかけたが、そのついでにあげた眼が、はたと、わしの眼にぶつかった。すると、小僧はすっくと起ち、ふところへ冊子を抛り込むと、踵を返して松林の奥へ消えて行ったが、奈世は小僧の、その挙動を見ると、ぎくりとした様子で振りかえり、わしを見つけると起き上がって恭々しく頭をさげ、箒を片手に、これは邸の裏手へ向けて忙わしい足取りでかくれて行った。
若い者達の世界のこととて、別に気にするでもなかったが、夕方、風呂に入り、奈世が背中を流して居る時、わしはあの小僧について訊いて見た。