Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしんあん
清心庵
泉 鏡花
Lesen Sie 清心庵 (せいしんあん) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.494 Zeichen · 26 Bildschirme
谷を攀じ、峰にのぼり、森の中をくぐりなどして、杖をもつかで、見めぐるにぞ、盗人の来て林に潜むことなく、わが庵も安らかに、摩耶も頼母しく思うにこそ、われも懐ししと思いたり。
「食べやしないんだよ。爺や、ただ玩弄にするんだから。」
「それならば可うごすが。」
爺は手桶を提げいたり。
「何でもこうその水ン中へうつして見るとの、はっきりと影の映るやつは食べられますで、茸の影がぼんやりするのは毒がありますじゃ。覚えておかっしゃい。」
まめだちていう。頷きながら、
「一杯呑ましておくれな。咽喉が渇いて、しようがないんだから。」
「さあさあ、いまお寺から汲んで来たお初穂だ、あがんなさい。」
掬ばむとして猶予らいぬ。
「柄杓がないな、爺や、お前ン処まで一所に行こう。」
「何が、仏様へお茶を煮てあげるんだけんど、お前様のきれいなお手だ、ようごす、つッこんで呑まっしゃいさ。」
俯向きざま掌に掬いてのみぬ。清涼掬すべし、この水の味はわれ心得たり。遊山の折々かの山寺の井戸の水試みたるに、わが家のそれと異らずよく似たり。実によき水ぞ、市中にはまた類あらじと亡き母のたまいき。いまこれをはじめならず、われもまたしばしばくらべ見つ。