Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしんあん
清心庵
泉 鏡花
Lesen Sie 清心庵 (せいしんあん) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.494 Zeichen · 26 Bildschirme
一
米と塩とは尼君が市に出で行きたまうとて、庵に残したまいたれば、摩耶も予も餓うることなかるべし。もとより山中の孤家なり。甘きものも酢きものも摩耶は欲しからずという、予もまた同じきなり。
柄長く椎の葉ばかりなる、小き鎌を腰にしつ。籠をば糸つけて肩に懸け、袷短に草履穿きたり。かくてわれ庵を出でしは、午の時過ぐる比なりき。
麓に遠き市人は東雲よりするもあり。まだ夜明けざるに来るあり。芝茸、松茸、しめじ、松露など、小笹の蔭、芝の中、雑木の奥、谷間に、いと多き山なれど、狩る人の数もまた多し。
昨日一昨日雨降りて、山の地湿りたれば、茸の獲物さこそとて、朝霧の晴れもあえぬに、人影山に入乱れつ。いまはハヤ朽葉の下をもあさりたらむ。五七人、三五人、出盛りたるが断続して、群れては坂を帰りゆくに、いかにわれ山の庵に馴れて、あたりの地味にくわしとて、何ほどのものか獲らるべき。
米と塩とは貯えたり。筧の水はいと清ければ、たとい木の実一個獲ずもあれ、摩耶も予も餓うることなかるべく、甘きものも酢きものも渠はたえて欲しからずという。
されば予が茸狩らむとして来りしも、毒なき味の甘きを獲て、煮て食わむとするにはあらず。