Japanische Klassiker mit Furigana
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うずまけるからすのむれ
渦巻ける烏の群
黒島 伝治
Lesen Sie 渦巻ける烏の群 (うずまけるからすのむれ) von 黒島 伝治 (くろしまでんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.240 Zeichen · 35 Bildschirme
「砂糖とパイナップルは置いて来ればよかった。」
「誰れかさきに、ここへ来た者があるんだ。」と武石が声を落して窓の中を指した。「俺れゃ、君が這入ったんかと思うて、ここで様子を伺うとったんだ。」
「誰れだ?」
「分らん。」
「下士か、将校か?」
「ぼっとしとって、それが分らないんだ。」
「誰奴かな。」
「――中に這入って見てやろう。」
「よせ、よせ、……帰ろう。」
松木は、若し将校にでも見つかると困る、――そんなことを思った。
「このまま帰るのは意気地がないじゃないか。」
武石は反撥した。彼は、ガンガン硝子戸を叩いた。
「ガーリヤ、ガーリヤ、今晩は!」
次の部屋から面倒くさそうな男の声がひびいた。
「ガーリヤ!」
「何だい。」
ウラジオストックの幼年学校を、今はやめている弟のコーリヤが、白い肩章のついた軍服を着てカーテンのかげから顔を出した。
「ガーリヤは?」
「用をしてる。」
「一寸来いって。」
「何です? それ。」
コーリヤは、松木の新聞包を見てたずねた。
「こら酒だ。」松木が答えないさきに、武石が脚もとから正宗の四合罎を出して来た。「沢山いいものを持って来とるよ。」
武石は、包みの新聞紙を引きはぎ、硝子戸の外から、罎をコーリヤの眼のさきへつき出した。