Japanische Klassiker mit Furigana
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こんとんみぶん
渾沌未分
岡本 かの子
Lesen Sie 渾沌未分 (こんとんみぶん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.232 Zeichen · 33 Bildschirme
この辺一体に藻や蘆の古根が多く、密林の感じである。材木繋留の太い古杭が朽ちてはうち代えられたものが五六本太古の石柱のように朦朧と見える。
その柱の一本に掴って青白い生ものが水を掻いている。薫だ。薫は小初よりずっと体は大きい。顎や頬が涼しく削げ、整った美しい顔立ちである。小初はやにわに薫の頸と肩を捉えて、うす紫の唇に小粒な白い歯をもって行く。薫は黙って吸わせたままに、足を上げ下げして、おとなしく泳いでいたが、小初ほど水中の息が続かないので、じきに苦悶の色を見せはじめた。それからむやみに水を掻き裂きはじめた。とうとう絶体絶命の暴れ方をしだした。小初は物馴れた水に溺れかけた人間の扱い方で、相手に纏いつかれぬよう捌きながら、なお少しこの若い生ものの魅力の精をば吸い取った。
借家を探しに行った父親の敬蔵が帰って来て雨上りの水泳場で父娘二人きりの夕飯が始まった。借家はもう半月もして水泳場が閉鎖すると同時にたちまち二人に必要になるのだが、価値の釣り合などで敬蔵はなかなか見つけかねた。場所はまだ下町の中央に未練があって、毎日、その方面へ探しに行くらしかった。帰って来たときの疎髯を貯えた父の立派な顔が都会の紅塵に摩擦された興奮と、疲れとで、異様に歪んで見えた。