Japanische Klassiker mit Furigana
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みおつくし
澪標・落日の光景
外村 繁
Lesen Sie 澪標・落日の光景 (みおつくし) von 外村 繁 (とのむらしげる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.889 Zeichen · 268 Bildschirme
つまり帰りたい一心、なんだよ」
「そんな無茶な話ってありませんよ。なんぼおばあちゃんでも、気まま過ぎますよ」
「しかしあの家にはおばあちゃんの八十二年の生活があるんだよ。しかもあの家以外にはないんだからね。無理ないかも知れないがね」
「だって、うちの玄関でも、逼ってでないと上れないのですもの。万一のことがあったら、どうするんです。殊に今は農繁期ですよ。おすまさんだって、来てもらえやしません」
「全く、同感。しかしね、事によると、おばあちゃんは、あの『お壇さん』のある江州の家こそ、自分の死場所と、きっと思い定めているのじゃないか」
「仏壇なんか、下らん、だから、宗教なんか、いやだわ」
「おいおい、女史よ、少し話が飛んだんじゃないかな」
翌日、私は母を東京駅まで見送った。丁度、安保条約反対のストの当日である。しかし東京駅へ私達が着いたのは、ストの解けた直後であった。間もなく列車も動き出す。しかもストのため、却って列車はひどく空いている。母と弟は窓辺の席に向かい合って坐ることができた。
「ほんまに、極楽やがな」などと、母は言っている。やがて列車は発車する、母は窓から頻りに手を振っている。