Japanische Klassiker mit Furigana
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みおつくし
澪標・落日の光景
外村 繁
Lesen Sie 澪標・落日の光景 (みおつくし) von 外村 繁 (とのむらしげる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.889 Zeichen · 268 Bildschirme
二
しかし、それにしても、この空の色はあんまりに美し過ぎた。騙し舟。折紙の、帆先をどんなに一生懸命持っていても、目つむれば忽ち舳先と変っている。それは少年の頃の幼い哀しみ。これにはもっと恐しい仕掛からくりがあるかも知れない。それに白昼、あんまりに静か過ぎた。何かに吸い込まれて行くような静かさだった。
私は、思わず立ち上り、隣室の妻の所へ行ってみた。妻は相変らず眠っている。私は妻の枕許に跼み、暫く腕組んで、その様子を眺めていた。吐く息、吸う息、いかにも安らかな呼吸だった。が、私は妻のいつにないそんな平静な状態が、かえってある不安を呼び起した。
「母さん。母さんよ」
私は妻の肩を揺ってみた。しかし妻は何の応えもなく眠っている。初めて、それかと気づいた私は、泣き声を殺して駆けて行く子供のような顔をして、医者の所へ走って行った。
二
果して脳軟化症の再発による意識不明なのだった。しかし遅くとも二三日もすれば、意識は回復するだろうとの診断であった。
この三月、妻がこの病気で倒れたとき、この脳軟化症という病気は、脳溢血よりも軽く、回復も早いが、度度起る心配がある由を、医者から私は告げられていた。