Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みおつくし

澪標・落日の光景

外村 繁

Lesen Sie 澪標・落日の光景 (みおつくし) von 外村 繁 (とのむらしげる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.889 Zeichen · 268 Bildschirme

Aozora Bunko

リンゲルの注射。しかしその太い針も、妻の皺の垂れた脚には、何の感覚も起こさないようだった。

今日も不思議なような好日である。南に向かって机を据えている、その障子には、冬木の枝が濃い形を映している。少しの風もないのか枝影はくっきりと染みついたまま、徐徐に東に移って行く。静かだった。その中に、今日も時計は鳴っていた。

「ただいまあ、母さん、まだ眠ってるの」

学校から末子の和夫が帰って来たのである。

「母さん、母さんたら。ちぇっ、つまんないの」

やがてまた、私達の唯一人の女の子である、郁子が帰って来た。

「ただいま、母さん、まだ気がつかないの。母さん、母さん。どうしたんでしょう」

しかし、妻は依然すやすやと眠り続けているのであろう。もちろん妻の答える声はなかった。

陽はよほど西に廻ったらしく、枝影はいつか消え、さすがに色薄らいだ陽差しが、障子の小間を斜めに染めていた。私はそろそろ妻の洗濯物を取り入れなければならなかった。

長男も、二男も、三男も勉強室に去り、郁子も、和夫も、食卓の上で復習を始めるらしかった。私は妻の病中よくしたように、晩酌のコップを持って、妻の枕許に坐った。