Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
みおつくし
澪標・落日の光景
外村 繁
Lesen Sie 澪標・落日の光景 (みおつくし) von 外村 繁 (とのむらしげる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.889 Zeichen · 268 Bildschirme
妻の顔には少しも苦痛の色がなかったが、呼吸が幾分早く、喉が低く鳴っていた。私は直ぐ長男を小野医師の所へ走らせた。
下駄履いて来た小野医師は、直ぐ妻の顔を覗き込むようにして、坐った。
「ああ、いけませんね」
「そうですか」
「電報お打ちになる所があれば、直ぐ打って下さい」
小野医師は最早診察もせず、私と同じように手を組んで、枕許に坐っていた。
「江州と、保木と、荏田とだね。どうしよう。江州へは、お出で願わずともよし、と打っといてもらおうか。何にしろお祖母さんはあのお年だからね」と、私は子供に電報打つ指図をした。
真実、母の老体を思ってのことではあったが、母は私達の結婚に永い間反対の人だったので、かえって妻の実家の人達の手前もあり、私はちょっとこだわるのだった。
「そうだ。無理に、と入れといてもらおう。無理にお出で願わずともよし、とね」
「それじゃ」と、小野医師は腰を上げた。
「こんどはとうとういけませんでしたね。臨終は十二時頃になるでしょう。また来ます」
「いよいよきたか」
私は自分自身にそう思い知らせようとした。しかしこの安らかな妻の顔を見ていると、なかなか死というものの実感は迫らなかった。