Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みおつくし

澪標・落日の光景

外村 繁

Lesen Sie 澪標・落日の光景 (みおつくし) von 外村 繁 (とのむらしげる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.889 Zeichen · 268 Bildschirme

Aozora Bunko

が、妻はいかにも安心したように、直ぐ体を落し、蒲団の中に入ってしまった。

私は机の上に俯伏したまま、うたた寝をしていたようである。今のは夢であろうか。それとも、妻の生前、そんなことがあったのを思い浮かべていたのであろうか。定かでない。最早夕方近く、ふと気づくと、学校から帰った子供が掛けてくれたのか、私の肩先には、妻の羽織が掛っていた。すると、私はやはり眠っていたのであろうか。

涙というものは、まして中年の鰥男の涙などというものは、薄穢いものだ。甘ったるい感情の自慰のようなものであろう。しかしいかに愚かな私でも、既に五十近く、私の涙袋もいつか干からびてしまうであろう。若しも涙のないこの哀しみというものは、どんなものであろうか。

一体、こんな哀しみは、どこから来るのであろう。あるいは私の胸の中に開いた空洞から湧いてくるのかも知れない。

妻が死んだという、その哀しみだけではないようである。それは私自身にも、なにか関りがあるようだ。たしかにその空洞は、少し曖昧な言葉ではあるが、私の生命力とでも言ったものの中に、口開いているかとも思われる。この腑抜けたような無気力さも、あるいはそのためであるかも知れない。