Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みおつくし

澪標・落日の光景

外村 繁

Lesen Sie 澪標・落日の光景 (みおつくし) von 外村 繁 (とのむらしげる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.889 Zeichen · 268 Bildschirme

Aozora Bunko

妻を知った頃の私の日記には、毎日気負い立った、若若しい言葉が書き連ねてある。その頃の、某日の一句である。

「二人は最早、別別の二個ではない。一個である、生けるものに、0.5 というものの存在はない」

そうであった。私は若い日の自分に教えられた。契りとは、私だけのものではない。妻だけのものではない。すると、私の命の中に開いた空洞は、言って見れば、今は亡い二人の契りの痕かとも思われる。最早、それは 0.5 ではない。0 である。

その空洞には未来はない。あるものは過去だけである。過ぎ去った日日の黒闇の中に、思い出だけが、儚い色に灯点っているばかりだ。すると、この哀しみは、その空洞の未来のない未来を、私の生の終りの日まで、既に涙もなく、荒涼と駆け巡るのであろうか。

そう言えば、子供達は思いの他に元気である。和夫でさえも、骨持っての火葬場の帰途、凧上げている友達に、大声で呼びかけたという。

「直ぐ行くから、待っとってね」

案じていた、ひとり娘の郁子も、それほど力落した気配もない。

皆、過ぎ去ってしまった母の死に、いつまでもかかずらっていられないほど、彼等の未来は遥かなのであろう。