Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みおつくし

澪標・落日の光景

外村 繁

Lesen Sie 澪標・落日の光景 (みおつくし) von 外村 繁 (とのむらしげる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.889 Zeichen · 268 Bildschirme

Aozora Bunko

それはともかく、これが私の脳裡に残っている唯一の祖父の姿である。同時に、私の最も古い記憶のようである。祖父が亡くなったのは明治三十九年五月であるから。

祖父の葬儀の時の記憶もある。雨が降っていて、叔父達が木の枝に照る照る坊主を吊っていたのをはっきり覚えている。しかしこんな他愛ない一駒だけを残して、私の記憶は断ちきられ、その前後には深い昏迷の世界が拡がっているばかりである。

祖父の葬儀の当日、私は白張提灯を持って葬列に加わった由であるが、女中の背中で眠ってしまったという。幼い日のことである。このような時にも眠ってしまって、全く記憶を刻まなかった場合もある。しかしまた、幼い脳裡のことである。記憶は刻まれても、直ぐ忘れてしまったことも極めて多かろう。が、私にとって、私の過去は決して空白ではない。記憶は失われたが、幼いながら、数多い日日が埋もれている。空白ではなく、深深とした闇の感じである。そうしてその闇の中には、形は見えないが、さまざまなものが潜んでいるはずである。時には一瞬、ぼんやりその影を映すかと思うと、忽ち底深く沈んでしまう。

私はお化が恐しかった。