Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぼくとうきだん

濹東綺譚

永井 荷風

Lesen Sie 濹東綺譚 (ぼくとうきだん) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 57.666 Zeichen · 114 Bildschirme

Aozora Bunko

三木愛花の著した小説芸者節用などのはなしも、わたくし達二人の間には屡語り出される事があった。

万茶亭の前の道路にはこの時間になると、女給や酔客の帰りを当込んで円タクが集って来る。この附近の酒場でわたくしが其名を記憶しているのは、万茶亭の向側にはオデッサ、スカール、サイセリヤ、此方の側にはムウランルージュ、シルバースリッパ、ラインゴルトなど。また万茶亭と素人屋との間の路地裏にはルパン、スリイシスタ、シラムレンなど名づけられたものがあった。今も猶在るかも知れない。

服部の鐘の音を合図に、それ等の酒場やカフエーが一斉に表の灯を消すので、街路は俄に薄暗く、集って来る円タクは客を載せても徒に喇叭を鳴すばかりで、動けない程込み合う中、運転手の喧嘩がはじまる。かと思うと、巡査の姿が見えるが早いか、一輛残らず逃げ失せてしまうが、暫くして又もとのように、その辺一帯をガソリン臭くしてしまうのである。

帚葉翁はいつも路地を抜け、裏通から尾張町の四ツ角に出で、既に一群をなして赤電車を待っている女給と共に路傍に立ち、顔馴染のものがいると先方の迷惑をも顧ず、大きな声で話をしかける。