Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぼくとうきだん

濹東綺譚

永井 荷風

Lesen Sie 濹東綺譚 (ぼくとうきだん) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 57.666 Zeichen · 114 Bildschirme

Aozora Bunko

七

七

わたくしはお雪の出て行った後、半おろした古蚊帳の裾に坐って、一人蚊を追いながら、時には長火鉢に埋めた炭火と湯わかしとに気をつけた。いかに暑さの烈しい晩でも、この土地では、お客の上った合図に下から茶を持って行く習慣なので、どの家でも火と湯とを絶した事がない。

「おい。おい。」と小声に呼んで窓を叩くものがある。

わたくしは大方馴染の客であろうと思い、出ようか出まいかと、様子を窺っていると、外の男は窓口から手を差入れ、猿をはずして扉をあけて内へ入った。白っぽい浴衣に兵児帯をしめ、田舎臭い円顔に口髯を生した年は五十ばかり。手には風呂敷に包んだものを持っている。わたくしは其様子と其顔立とで、直様お雪の抱主だろうと推察したので、向から言うのを待たず、

「お雪さんは何だか、お医者へ行くって、今おもてで逢いました。」

抱主らしい男は既にその事を知っていたらしく、「もう帰るでしょう。待っていなさい。」と云って、わたくしの居たのを怪しむ風もなく、風呂敷包を解いて、アルミの小鍋を出し茶棚の中へ入れた。夜食の惣菜を持って来たのを見れば、抱主に相違はない。

「お雪さんは、いつも忙しくって結構ですねえ。