Japanische Klassiker mit Furigana
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はいいろのきおく
灰色の記憶
久坂 葉子
Lesen Sie 灰色の記憶 (はいいろのきおく) von 久坂 葉子 (くさかようこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 65.588 Zeichen · 132 Bildschirme
彼は私を気に入っていた。
街に、うすいウールや毛糸が出はじめる頃、突然、大岡少年は東京の支店へ転勤させられることになった。別に取立てて理由はなく、半年位たてば、交代に、三つの支店へ派遣されることになっていた。彼は、さみしそうでもなく、一人一人の社中の人に挨拶をした。私の前でも、真面目な顔でお辞儀をし、小さな包みを机の下の私の両手の上にのっけた。私が挨拶される一番しまいの者であったから彼はさっさと部屋を出ていった。小さな包みは、記念品とかいた新聞紙につつまれた外国製の口紅であった。外観と中身とが、とっ拍子もなくかけはなれているのに、私は微笑みをもらした。何か字をかいたものがないかとたんねんに新聞紙をひろげなおしてみたが、四角いペンの字で、記念品とかいただけしかみあたらなかった。折紙大の新聞紙の切れはしは、ありふれた証券日報のふるいのであり何の暗示めいた文字も見当らなかった。口紅は金色のケースにはいっていた。闇屋から買ったらしく高価なアメリカ製であったが、底を右にまわすと、びっくりするような牡丹色があらわれた。私は思わずふき出すと同時に、軽い失望を感じた。